今回の曲は≪ラメント≫の発展したもの、ということで微分音やポルタメントがさらに使われていたので、その 指をさがす(どの指で吹いたら最良の音と、最良のつながりになるのかを検討すること)のにとても時間がかかりました。
パート譜をいただいたのがコンサートの3週間前で、ちょうど佼成の九州ツアーと重なっていた
こともあり、まず計画を立てて練習にかかることにしました。
1週間は特殊奏法の指さがしに、つぎの
1週間はその指で吹いた音がなめらかにつながるように、そして最後の1週間はそれが音楽的になるように、
とこんな風に進めたのです。
とはいっても、佼成のツアー中ですから、自分だけの練習時間もそうはと
れない。そこで、ひとり朝早めに会場に行ってゲネプロ前に練習、それからゲネプロが終わって、本番までも
練習。佼成の他の団員には、ずいぶん迷惑をかけましたが、こんな時間の使い方でなんとかやりくりしたんです。
こうしてリハーサルの日。初めてN響の前に立つと、ここにもそこにもあそこにも、芸大の先生方のお顔が。
さすがに一瞬ひるんでしまいました。ところが、芸大の先生方もそのほかのN響の方々も、今回の作品が非常に
難曲であることをよく理解してくれ、温かいサポートをしてくださいました。それはほんとうに頼もしくうれ
しく心強かったです。
今回は、僕自身の委嘱ではなく、オペラシティから西村さんへの委嘱ということ
だったので、その初演を手がけることの使命感や責任感というものを強く感じた機会でした。ファンのみなさん
や、多くの方々のおかげで気持ちよく演奏に専念させてもらい、光栄に思っています。どうもありがとうござい
ました。
(須川 展也)