FAQ
 2. 演奏法・練習法など
Q.満足のいく音色が出せず、悩んでいます。どうやったらきれいな音が出せるようになるでしょうか?
A. 美しい音作りのための秘訣を、いくつかのステップに分けて解説してみましょう。

1. 理想の音のイメージを持つ
美しい音作りを目指すうえで、まず大事なのは、自分なりに理想の音のイメージを持つことです。人は誰でも美しい音を持っていますが、宝石の原石のように美しさが隠れていることがしばしばです。ただ何となく吹いているだけでは、ずっと原石のままです。理想の音のイメージを持ち、それを目指して吹きつづけることにより、この理想のイメージと、その人が本来持っている美しい音がうまくミックスされ、音が輝き出すのです。

2. 楽器のセッティングのバランスをチェックする
次に重要なのは、自分の使っているマウスピース・楽器の状態やリード堅さのバランスをとることです。マウスピースに対してリードが薄すぎたり堅すぎたりすると、音色のコントロールに支障が出ます。また、楽器の状態が悪いと良い音を出すのも難しくなります。定期的に楽器修理店、リペアマンに点検してもらうとよいでしょう。

3. アンブシュア(マウスピースのくわえ方)やノドの状態をチェックする
アンブシュアが音色に悪影響を与えていることもよくあります。上の歯をマウスピースに置く位置が深すぎていないか、また下唇の下のあごが「梅干し状態」にならず伸びているかどうか、一度確認してみるとよいでしょう。上の歯はマウスピースの先端から1センチ前後のところに固定し、しっかりマウスピースを支えることが重要です。(テナーはそれよりもうちょっと深めで、バリトンだったら1.5cmぐらいがいいと思います。)下唇は締め付け過ぎないよう、ある程度のリラックスが必要です。また、マウスピースをくわえたとき、上下の歯がほぼ垂直にそろうよう、下歯をふだんより少し前に出した感じにするとよいでしょう。
ノドはリラックスして、口の中が広くなる状態をイメージします(舌の奥が上がらないよう注意)。アンブシュア、ノドの状態に関する詳細については、「うまくなろう!サクソフォーン」のp.17も参照して下さい。

4. 基礎練習、エチュード(教則本)、自由曲をバランス良くこなしながら音を磨く
美しい音作りには基礎練習が欠かせません。スケール(音階)を使ったロングトーンを、ゆっくり、全音域にわたって行い、低音から高音まで均等に楽器が鳴るよう目指して下さい。一回ですべての調をこなす必要はなく、毎日違った調で練習するのが効率的でしょう。(詳しくは「うまくなろう!サクソフォーン」pp.22−23を参照。)半音ずつのゆったりしたスケールで、ヴィブラートをかけつつ音色を磨くのも一法です。(詳しくは「うまくなろう!サクソフォーン」pp.43−44を参照。)基礎練習は短い時間でよいから継続的に行うことが大切です。
基礎練習のあとにはエチュード(教則本)を使った練習をしましょう。ラクール(Lacour)の「50のエチュード」(50 _tudes)の第一番のようなゆっくりした音符で音色を磨くのがよいと思います。(初心者から音大レベルまで、代表的なエチュードは「うまくなろう!サクソフォーン」p.48に紹介してあります。)
基礎練習・エチュードの練習のあとには、自分の好きな曲を練習するとよいでしょう。音色を磨く上で、好きなメロディーを練習するのは効率的です。(曲を吹いていてつまづいたら、またエチュードに戻ってみるのもよいかもしれません。)
大切なことは、基礎練習・エチュード・自由曲をバランスよくこなすことです。偏った練習はかえって音色の成長を遅らせてしまうことがあるので注意しましょう。

5. 根気よく、かつ楽しみながら吹き続ける
音色の改善には、時として長期にわたる鍛錬が必要となります。練習の効果がすぐに出なくても焦らず、上達を信じて吹きつづけることが大切です。練習を継続させるためにも、音楽を楽しむことを忘れないようにして下さい。最後に、もし近くにプロの先生や音大生などがいたら、一回実際に自分の音を聴いてもらってアドバイスを受けてみると、新しい発見があるかもしれません。
Q.オクターブキーを押して吹くと下の音も混じってしまい、困っています。何か原因が考えられるでしょうか?
A. マウスピースを深くくわえ過ぎるとオクターブ下になりやすいこともあります。またオクターブキーのトーンホール内に水滴や汚れがたまるとそうなりやすいこともあります。
Q.音を鳴らすたびに雑音が混じってしまうのですが、どうしたら透き通った音が出るのでしょうか?
A. リードとマウスピースの関係がうまくいってないか、アンブシュアの問題があるのかもしれません。(ビリビリ鳴ってしまったりしたら、リードの選択ミスの可能性もあります。)ただ、雑音に神経質になりすぎる必要はないと思います。雑音は誰しも持っているもので、逆に楽器を響かせることによってそれを上手に生かすこともできます。(楽器をいい音でいい位置で鳴らすことができたら、雑音はうまく溶け込んで響きを助ける材料になったりもします。)まったく雑音のない音というのは、意外とつまらないのではないでしょうか。
Q.高音が薄っぺらくなってしまうのですが、どうすればよいのでしょうか?
A. まずはアンブシュアのチェックをおすすめします。上の歯をマウスピースに置く位置が深すぎていないか、下唇の下のあごが「梅干し状態」にならずに伸びているかどうかを確認してみて下さい。(マウスピースをくわえたとき、口の形のイメージは「イ→ウ」の中間です。)あとは、口の中の容積をもっと大きくとるようにすることをイメージしてみたらどうでしょうか。息の出し方は「ホー」といったイメージです。(舌の奥が上にあがりすぎないよう気をつけて下さい。)
Q.なかなか低い音が出ないのですが、どのような練習をしたらよいでしょうか?
A. スケール(音階練習)を、全音域でロングトーンすることが一番だと思います。低音域だけ練習したかったら、いきなり低音から始めるのではなく、中音域のドあたりの出やすいところ徐々に下がっていくことがコツです。
Q. 音程(とくに中音のレ)が合わないのですが、どうしたらよいでしょうか。また、須川さんはいつもどのように音程を合わせているのでしょうか?
A. 喉の奥の状態が狭くて口の中の容積が狭くなるとピッチが高めになることが多いので、そのあたりを直してみてはどうでしょう。私自身は、アンブシュアは変えませんが、喉の状況や指使いを工夫するなどして合わせています。
Q.吹いているとき口の両端から息が漏れ、息が足りなくなってしまうのですが、どうしたらよいでしょうか?
A. 口の形を「イ」と「ウ」の中間ぐらいにして、マウスピースを口の真ん中にもってくるように心がけてみて下さい。(アンブシュアの詳細については「うまくなろう!サクソフォーン」p.17も参照して下さい。)口の両端から息が漏れるのは、たしかに両端の締め付けが悪いことだと思いますが、その対策として、口をしめる部分にだけ注意を払うのではなく、口の中を広い状態にすることも考えてみると解決の糸口になるかもしれません。
Q. 息つぎ(ブレス)をする間がほとんどない曲があるのですが、音がとぎれぬよう素早く息が吸えるようになるには、どうしたらよいのでしょうか?
A. その曲のテンポで一番最初に音を出す二拍前に息を出し、一拍前に息を吸うようにすると深く吸うことができます。最初はきついと思った楽譜も、たくさん息を吸えるようになれば少し楽になりますよ。(詳しくは「うまくなろう!サクソフォーン」pp.17−18, p.28も参照して下さい。)
Q. 練習していると、どうしても下の歯で下唇を強くおさえてしまい、口が痛くなるんですが、どうすればいいでしょうか?
A. 下の歯に脂取り紙(顔の手入れ等に使われる薄い化粧紙)などを折って巻く手があります。私が常に使っていて具合がよいのはコーセーのクリーンティッシュです。(紙の折り方、他の方法等の詳細は「うまくなろう!サクソフォーン」pp.96−97を参照して下さい。)
Q.音の切り方(レリース)がうまくいかないのですが、アドバイスをいただけないでしょうか?
A. 音の切り方(レリース)には1. 息を止めて音を止める2. 舌をリードに触れ、音を止める、の二つの方法があります。フレーズの終わりで音が自然に消えていくところでは1、息で止めていては間に合わないところは2を用います。1(息で止めるレリース)の場合、アンブシュアがゆるむとピッチが下がってしまうので、息を止める際、アンブシュアが変わらないように気をつけることが大事です。(詳しくは「うまくなろう!サクソフォーン」p.25を参照して下さい。)
Q.タンギング(とくに速い音符)がうまくできません。どうしたらいいでしょうか?
A. タンギングのチェック・ポイントをいくつか挙げてみます。

1. 舌はリードの先端に触れる
リードに舌がべったり触れてしまうと汚くなってしまうので注意。

2. あごを動かさずに「Tu」と発音する
「Ta・Ta・Ta」というように「a」の成分が入るような形でタンギングをしていると、舌の根元やあごが動き、アンブシュアの変化がピッチと音質を変化させてしまうため、「Tu・Tu・Tu」というように「u」の成分が入るようする。

3. 息の支えもしっかり保つ
舌の動きに気を取られて息が十分入らないと、ノイズが多くなる。

タンギングの練習法については、「うまくなろう!サクソフォーン」pp.26−28を参照して下さい。
Q.きれいで自然なヴィブラートをかけられるようになるには、どのように練習したらよいでしょうか?
A. まずは、ゆっくり均等にヴィブラートがかけられるよう、メトロノームを使ってじっくり練習することだと思います。(メトロノームを4分音符=76にし、1拍につき波を4つ入れるようにするのが標準的な練習法です。)ある程度自由がきくようになったら、曲想に合ったヴィブラートにしていけばいいと思います。そのとき、あまり波が深くなりすぎないように注意しましょう。また、ヴィブラートのかかり初めが遅れたり、不自然になったりしないよう、音符の初めからヴィブラートをかける練習をするとよいと思います。あとは、オクターブキーを押したり離したりするときに音色が変わりすぎないよう、オクターブキーを押す音と押さない音をいったりきたりするようなロングトーンをすると効果的だと思います。(ヴィブラートに関する詳細は、「うまくなろう!サクソフォーン」pp.37−44およびpp.56−58を参照して下さい。)
Q. 超高音 (フラジオまたはアルティッシモ) を出すための指づかいが分からないのですが、 どうしたらよいでしょうか?
A. (たびたび引用してしまって恐縮ですが)「うまくなろう!サクソフォーン」のp.78以降を読んでもらえるとわかると思います。
Q. フラジオ(アルティッシモ)をきれいに出すためのコツ、よい練習法等があったらアドバイスをいただけないでしょうか?
A. フラジオ習得の第一歩は最低音の指にオクターブキー(oct)を足して倍音を出す練習をするうちにきっかけをつかむことだと思います。そのためにはまず、スケール練習などを重ねて普通の最低音から最高音の音域がしっかり吹けるようになることが大事です。あとは、楽に力を抜くと出やすくなると思います。(倍音を出すコツ、フラジオの練習法等に関しては「うまくなろう!サクソフォーン」のp.78以降を参照して下さい。
Q.サクソフォーンのグリッサンド(ポルタメント)はどのようにかけるのでしょうか?
A. クラリネットの場合だと、指をずらしてトーンホールを広げながらグリッサンドをしますが、サクソフォーンの場合は、アンブシュアと指を両方使ってします。指が先行し、これをアンブシュアの絞りこみが追いかけるようにしてグリッサンドをするわけです。練習法としては、まずはアンブシュアを緩めたり戻したりして音程を上下させるトレーニングをしてみてください。次に、比較的狭い音域(たとえば高いシの音からレの音にかけて)で指をゆっくり動かしながらコツをつかみ、だんだん音域を広げていくとよいと思います。(詳しくは「うまくなろう!サクソフォーン」pp.85−86を参照して下さい。)
Q. テンポの速い曲の、細かいスケールの指やタンギングが追いつかず、転んでしまうのですが、どうしたらよいでしょうか?
A. 細かなスケールは誰もが苦手とすると思います。基本はメトロノームでゆっくりのテンポから地道に練習することです。注意点は、ただ音を並べるだけでなく、ゆっくりでもアクセントやニュアンスに気をつかい、だんだんテンポを上げることですね。
Q.合奏曲の中でソロがあるのですが、どのようなことに心がけて演奏すべきでしょうか?
A. 吹奏楽のソロを吹く時だけとは限らないのですが、たんに音符だけを追わず、そのフレーズの中の「山場」または「頂点」を見つけ、そこに向かって音楽の高まりをどのように持っていくかを決めていくことがポイントになります。あとは、それを音であらわすためにヴィブラートや音の強弱をつけて補っていきます。自分の声で歌ってみるというのも効果的なことがあります。自分の思っているよりも少しオーバーに吹くとよいこともあります。(フレーズの解釈と表現力のアップの方法については「うまくなろう!サクソフォーン」のpp.65−68を参照して下さい。)
Q.初心者ですが、基礎練習ではどんなことをやったらいいのでしょうか?
A. 初心者の場合、基礎練習としてまずロングトーンは欠かせませんね。その際、目的をもってロングトーンをすることが大切です。例えば「いい音をイメージする」「音が震えないように注意する」「自然なリラックスした状態でたくさん息を吸う」「音域による音ムラを少なくする」などです。また毎日調整を変えて、スケール、アルペジオ(分散和音)を、アーティキュレーションも変えながら練習してみるといいと思います。(基礎練習の練習メニューの例は「うまくなろう!サクソフォーン」のpp.45−47にあります。)
あと、基礎練習も大事ですが、好きなメロディーを吹くのも忘れないことが重要だと思います。
Q.サクソフォーンの上達の秘訣とは何だと思いますか?
A. 一概にはいえませんが、まずは楽器を好きになり、興味を持つことでしょうか。その好奇心が上達の原動力になると思います。あとは音楽を楽しみながら練習を続けることだと思います。(楽しむことは私が非常に大切にしていることです。楽しみながら難しいことするのもいいと思います。)
Q.スランプなのか、いくら練習をしてもうまくならない気がして落ちこんでいます。何か打開策はないでしょうか?
A. マイナス思考で考えるとどんなことでも失敗してしまいます。プラス思考で目標に向かってとことん努力すること(←それも中途半端な努力ではなく!!)が大事だと思います。
いま練習している曲を吹きながら、まず自分のいいところを感じましょう。次にうまくいかないところの原因を探ります。なぜそこがうまくいかないかを把握するために、そのフレーズに近いような基礎練習(〈例〉指の転びならばスケール、タンギングならばアーティキュレーションをともなったスケール、ヴィブラートならば思いきってラクールの50の一番)をすることでしょう。目的を明確化・分化した練習が習慣になるのがもっとも大切なことと思います。
人間のもっている音楽(音色、解釈、演奏法など)はひとりひとり違うものです。「悪い音」「下手な演奏」といったネガティブな考えを捨て、自分の音楽をどう発展させるかを考えましょう。あとは多くの音楽を聴き、感性を磨いていったらどうでしょうか。結果は後から自然について来るものと思います。
Q. 須川さんは演奏会の本番の前など、緊張したりしないのですか?またそんな時はどうされますか?本番前の過ごし方、本番時の心がけなど教えていただければ光栄です。
A. 本番前はだれでもそうだと思いますが、私も緊張します。でも緊張する自分を認めているという感じでしょうか。まず自分は緊張しているっていうことを理解し、そのうえで、「まぁ練習を頑張ったんだからいい演奏ができるはず」と言い聞かせています。(プレッシャーを克服するためのソリストの心がまえについては「うまくなろう!サクソフォーン」pp.87−90でも論じています。)
いざ本番が始まったあとは、楽器のテクニックなどの技術的なことよりも、演奏する曲の持ち味をいかに引き出すかといことに集中しています。
←INDEX ←BACKNEXT→